バティックミュージアム

 バティックはジャワ宮廷の女性の嗜みで行われたろうけつ染めですが、そのうちに宮廷の女官、一般の人々に普及して今日に至っています。着蝋はチャンティンを使いマラム(蝋)を下絵に従って置いていきます。細かい模様を手で描く作業、しかも布の表裏とも同じ模様を描くので、2mぐらいの布を作り上げるのに1年程かかると言われています。
 染色は蝋部分を残して着色され蝋を洗い流すまでが一工程、着蝋→染色→脱蝋を繰り返すことで多色染めを作り上げていきます。バティック購入時の注意があります。ロウケツ染めのバティックは布にロウ独特の匂いがします、匂わなければバティックプリントで、手触りもサラッとしています。
 インドネシア現代バティックの旗手は、イワン・ティルタ(Iwan Tirta)とジョセフィン・コマラ(Josephine Komara)。イワン・ティルタ作品は絹布に金を大量に使った大胆・豪華なデザイン、絢爛たるバティック、この金更紗(金箔や金泥で装飾した絢爛豪華)で世界に発信しています。ジョセフィン・コマラ作品は手織りの縮みのような絹に繊細な模様が施された、イカットを取り入れたバティックです。


技法による分類

  手書きバティック(batik tulis バティック・トゥリス) 
       模様すべてが手書きによるもの。チャンティンに溶けたマラム(蝋)を入れ描いていきます。

       道具類(チャンティン、鍋、マラム)は下記写真をご参照下さい。Purchase it in Mirota Batik (ジョグジャ)

左から cantine cered, cantine tembok, cantine klowong, cantine klowong, cantine isen
wajan batic kci, malam klowong
canting (チャンティン) wajan batic kci と malam klowong (線引きマラム)

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  型押しバティック(batik cap バティック・チャップ)  
       型で模様を付けます。
       詳しくは、下記ホームページを参照ください。
       http://users.powernet.co.uk/mkmarina/indonesia/cap_batik.html

  コンビネーション(batik kombinasi バティック・コンビナシ)  
       型押し模様と手書き模様が混ざり合ったバティック。

  バティックプリント(batik print サブロン Sabron)
       工場で大量生産されている、普通の布。


用途による分類

 バティック・プラダ(Batik Prada)
        金彩を施した金更紗、結婚式などおめでたい時に使う。

 サロン(幅100〜105cm、長さ185〜225cm)
     筒状に縫い合わせ腰に巻き着用する。

 カイン・パンジャン(幅100〜105cm、長さ約260cm)
     腰に巻く、長い(パンジャン)・布(カイン)。

 スレンダン(幅30〜50cm、長さ約200cm)
     折り畳み右肩から掛ける女性用の肩掛。

 ゲンドガン(幅100〜105cm、長さ約260cm)
     赤ん坊や荷物を運ぶ時に利用する荷布。

 カイン・クパラ(約100cmの正方か三角形))
     中部ジャワ男性が正装時にかぶる頭巾。

 パギ(朝)ソレ(夕)形式(布の中央で模様が異なる)
     巻く方向で異なる模様となる。
     1枚で2種のバティック効果が得られる


産地による分類

 バティックは地域ごとに特徴があり、王宮のある内陸地域と北部の海岸地域に大きく二分されます。バリ島トパティ村のバティック工房はジャワから観光のため来たもの。バリ島デンパサールの工房は現代バティック制作に情熱を傾けているようです。
 内陸部の伝統的なバティックの色は天然染料の暗茶色が基本でソガ染めといわれ、藍色が補完的に使用されます。模様は幾何学な数種のパターンからなり、これらに抽象化された動物や植物のモチーフが多く、ガルーダ(霊鳥)がシンボライズされているのは、偶像を描くことを禁じたイスラム教の影響からです。
 ジョグジャカルタやソロなど内陸部の古都で製造されるバティックはバラン(刀を模したらせん状の連続文様)などの伝統の古典模様を主としたもので、かつては庶民が使ってはならないという王家模様も定められていました。
 一方、プカロンガンを中心とするパシシル地方でも中国人やヨーロッパ人によってバティックが製作され、化学染料を用いて赤や緑と色彩が多様です。花・鳥・ヨーロッパや中国のデザインも取り入れられ、アラビア、ペルシアからの影響で瀟洒なバティックになりました。チルボン、インドラマユなど地域毎に特色のあるデザインが特徴で、ラムスは赤色に特徴があると言われています。
 ジャワ人はバティックを後生大事に使います。そして使うほどに色は冴え、布が肌に馴染むようになるのがバティックなのです。


中部ジャワ様式

 古い伝統が息づくジョグジャカルタとソロの宮廷で発達した伝統色彩と模様構成を継承、ガルーダ・パランなど貴族のみ使用が認められた禁制文様や、ソガ(染料を用いた茶色色調)が多いのが特徴です。茶褐色と青色の2つの系統に限定され、地色が濃茶褐色や青色などの暗いもの、 地色が白あるいはクリーム色などの明るいもの などのヴァリエーションがあります。
 インドからの仏教やヒンドゥー教の影響を受容、模様は多岐にわたりますが、主として斜め縞・植物のモティーフ・格子模様・継ぎはぎ模様 などの種類があります。


ジョグジャカルタ
 動物をモチーフにした模様・幾何学的模様が多い。茶褐色系が一般的で濃淡がハッキリした大柄が多い。

ソロ
 王宮文化が残る古都。ジョグジャカルタと同じく藍とソガ(茶色)の二色だけのものが多いが、ソガの色が黄味がかった赤茶系となり、地色も薄茶となったトラディショナルの色柄に特徴があります、花・鳥・七宝柄・パラン柄で有名。

クルック
 ゲドォクを用いた、昔ながらの素朴な更紗。模様は格子縞と、白生地に植物や鳥の中部ジャワ系の模様が描かれた2種が見られます。

ガルット
 主模様を単純な花鳥や幾何学模様の連続模様とし、白、薄茶などの淡い色調の地色が特徴。中部ジャワ形式の流れをくむ、レレン模様という斜線模様もガルットの特色。


ジャワ北岸様式

 ジャカルタ・チルボン・テガル・プカロンガン・スマラン・レンバン・ラスム・グルシク・スラバヤなどの港町や周辺地域で、海外交易により育まれた多種多様バティック。中国人・インド人・オランダ人などの文化を取り入れた様々なデザインが特徴。
 多様な色彩による華やかな色使いが特徴、19世紀終わり頃から導入され合成染料の使用によって確立されたもので、以前は青色・赤色・茶褐色が主な色彩であった。
 模様は異文化の影響が色濃く現れ、中部ジャワ様式と共通する模様も少なくないが、イスラム教(アラビア文字)や、中国(吉祥模様)・ヨーロッパ(アール・デコ調)・日本(花鳥風月)などに影響された特徴がある。


プカロガン(訶陵(カルン)に接頭辞と接尾辞のついてプカロンガン、シャイレーンドラ王国所在地であった)  
 オランダ植民地時代は欧州向け更紗生産地でした。花・鳥柄が主流、優美なバティック、ジョルジャ・ソロより色彩が豊かで華やか。中国的文様や花束文様も多いと言われています。
 オランダの影響を強く受けたカイン・カンパニー、日本更紗の影響を受けたカイン・ホウコウカイはプカロンガン独特のもの。ブケット(花束)模様で有名なウィ工房は精緻で流麗です。

チルボン
 中国・インド(仏教的)色彩の強いバティック。サロン用の花鳥柄と三角の幾何柄が多く、色彩は淡黄、茶、黒が多い。地色は薄茶系の黄色が多く、主模様に重点が置かれ、絵画的な要素が強い。代表的模様はメガ模様(雨雲をあらわしたもの)。

ラスム
 茜染の更紗で有名。この赤の美しさは他の生産地では真似できず、茜色に染めるためだけに持ち込まれたりしていた。以前は上質バティックを生産していたが、現在は三軒程の工房が存在します。

インドラマユ

 藍染めで繊細な模様のものが多い。空想動物、庭園模様、中国船模様などの異文化の影響が強く表れている。鳥や魚などを草花と組み合わせた模様、布地一面に施される点描模様が特徴です。

マドラ島
 パムカサン、サムパン、タンジュンブミの三地域で製作され、パムカサン・バティックは北岸系の流れですが簡略化され種類は少ないです。サムパン・バティックは中部ジャワ形式の流れをくんで、極細のチャンティンを使い繊細な蝋描きをします。タンジュンブミ・バティックは北岸系の特徴が強く表れており、蝋描きも丁寧で高い完成度です。

タシィクマラヤ
 ガルットの模様や色調に近いが、細部にこだわらず、点描も大きく、多少の不揃いも気にしない大胆で単純なものが多い。ガルット・バティックが高級品であるのに対し、タシィクマラヤのものは大衆向けです。

ジャンビ
 スマトラ島の東南部に位置し、インド更紗の影響を受け、華やかで美しい文様が多い。模様・配置・色彩がジャワ島とは異なり、地色が黄または薄茶をおびているのが特徴です。


デンパサール
 バリ州(バリ島)の州都、海岸から離れているので観光客は少ないが、工房に活気がある。 伝統模様にとらわれず、のびのびとした作風が特徴です。


Sonobudoyo Museum Showpiece



SHOP

ヤクームのバティック制作現場。


ヤクームリハビリテーションセンターは、バティックに巧妙な色やあじわいを出すため、伝統のインドネシア植物染料を用い、絹布に手書きしています。植物染料を使うのは環境に安全であると思っているからです。








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