グレン・ミラー物語 THE GLENN MILLER STORY (1954)
グレンミラーオーケストラは1940年前後に大ヒットした楽団で、そのサウンドは「ミラーサウンド」とも言える独特のきらびやかな世界を生み出してきました。映画はミラーがトロンボーン奏者としてよりも、作曲、アレンジのほうに興味を持ち、ベン・ポラック楽団に採用されるところから始まります。
そしてついには念願の自分の楽団を持ち、最初はドサ周りですがじきに人気バンドとなります。しかしそれもつかのまミラーは志願して軍隊に入るのです。
イギリスで兵士の慰問のための演奏活動をしているさなか、最後は移動中に飛行機事故で行方不明になってしまうという、悲しい結末で終わるストーリーになっています。イギリス空軍基地内でB-17爆撃機をバックに演奏しています、これほどしびれるシーンはありません、これぞグレンミラーオーケストラの真骨頂ではないでしょうか。ルイ・アームストロング、ジーン・クルーパ、ベン・ポラックらのジャズメンが特別出演する。




グレン・ミラー物語
http://www.sadanari.com/jazz981223_01.html から転載しています。
The Glenn Miller Story (1953 米 カラー 116min.)

 
スタッフ
 

監督
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. . . . . . . .アンソニー・マン
音楽
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. .ジョセフ・ガージェンソン

 
キャスト
 

グレン・ミラー. .
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ジェームズ・スチュアート
ヘレン・ミラー. .
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. . . . . .ジューン・アリスン
特別出演 . . . .
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. . ルイ・アームストロング
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. . . . . . .ジーン・クルーパ
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. . . . . . . . . ベン・ポラック
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フランセス・ラングフォード
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. . . . . モダネアズ合唱団

 




■ 最高傑作!これを観ずして...

 ロサンゼルスの楽団でトロンボーンを演奏するグレン・ミラー。しかし彼は自らのアレンジで、新しい音楽を生み出したいと考えている。

 ある日のこと在籍するベン・ポラック楽団がグレンの出身地デンバーを訪れた。グレンは大学の同級生、へレンの家に向かう。仕事が終わってから、明け方に、である。しかも2年振りで、その間音沙汰なし。ヘレンは最初、彼が誰だか判らなかった程だ。寝ているヘレンを通りから大声で叩き起こし、そっと手渡したのは、質屋で買ったニセモノの「真珠の首飾り」であった。
 翌日、母校コロラド大学を訪れる2人、グリークラブが歌う「茶色の小瓶」を「大好きな曲」だというヘレン、「モッタリしてるよ」というグレン。そこにバンドメンバーの車が現れ、グレンは飛び乗る。ひとり残されたヘレンは一言、「あきれた人」。

 更に2年後、ポラック楽団を辞めアレンジを追い求めるグレンだが、生活は苦しい。そんなとき、夜のニューヨークの街角に流れる「茶色の小瓶」を聴いて、突如ヘレンを呼び寄せて結婚しようと思い立つ。レコード店の電話を借りて「NYに来い!話はこっちへ来てからだ。電話番号はペンシルバニア6−5000」。これで着くなり結婚してしまうんだから、ヘレンもなかなかの人物である(笑)。なんと地元に別の婚約者もいたのに...。

 やりくり上手なヘレンのへそくり「グレン・ミラー楽団基金」を元に、いよいよ自己のバンドが活動を開始。ところが客の不入りや興業主とのトラブルでバンドは解散、旅の疲労からヘレンは流産してしまう。苦難の船出ではあったが、しばらくしてバンドは復活、管楽器を多用した美しいハーモニーが話題となり大人気を博す。
 ヘレンは流産が災いして子供の生めない身体になるが、子供好きのグレンは養子をとるというエピソードも挿入される。
 そんなさなかに、グレンは空軍に入隊する。階級は大尉。時あたかも第二次大戦の真っ只中であった。「軍の中でも自分の楽団を持ちたい」というグレンだが、軍隊はそんなに甘くない。来る日も来る日も退屈なマーチばかり。ある日のこと、将軍を迎えての観兵式の行進中に、突如「セントルイス・ブルース」を演奏する。直属の上官からは「隊の恥じだ!」と大目玉だが、アーノルド将軍には大好評。これがきっかけで軍隊内で「グレン・ミラー楽団」が編成される。

 空襲下のロンドンで、連合軍の格納庫の中で、慰問演奏を続けるグレン。パリ解放、大戦も終盤に差しかかって来た。クリスマス特別番組の為に、濃霧の大西洋をロンドンからパリに飛ぶ。運命のフライトである...。

 そして、クリスマスの夜。パリからの生中継を本国で聴くヘレンと子供たち。グレンは、パリには、現れなかった。グレンのいないグレン・ミラー楽団が奏でるのは...彼女のために、この日のためにアレンジしたスウィング版「茶色の小瓶」であった。


日本初公開時のプログラム
父親の知人より頂いたもの


■ かいせつ

 第二次大戦末期の1944年12月、悲劇の事故死を遂げたスウィングの神様、グレン・ミラー(tb)の物語。男性には見どころの多い音楽映画として、女性には愛に溢れたロマンティック・ムービーとして楽しめるだろう。名曲誕生にまつわるエピソードの数々など、素晴らしい演出で魅せてくれる。
 最初に観たのが小学生のとき。ラストシーンでは涙が止まらなかった。10年ほど前にヴィデオを入手。以来、年に数回は観ている。恥ずかしながら、その度に同じように涙を流してしまう(苦笑)。

 なぜ何回も観たくなるか。その理由は2つある。まずは「あのシーンが観たい!」と思わせるところが沢山あるからだ。中でも最も魅力的なのが、グレンが軍の式典で「セントルイス・ブルース」を演奏するシーンである。厳粛な軍の行進にブルースが響きわたる!こんな快感があるだろうか。
 行進の列を横切って楽隊に近づくグレン。「将軍のためにやるぞ」と言うなり、ジャズ風のドラム・フィルと共に「セントルイス・ブルース・マーチ」が流れ出す。そして嬉しそうな黒人兵たち...。音楽映画史に残る名シーンだと思う。そのほか、ちょっとしたコメディー仕立ての演出も多々あり、オチが判っていてもつい笑ってしまうのだ(笑)。
 もうひとつの理由は主役2人の素晴らしいキャラクターである。ヘレン役、ジューン・アリスンのハスキー・ヴォイスはキュートの見本のよう。強引なグレンに呆れつつも惹かれるお嬢様を好演、彼女の明るさには心が和む、が、単なるお嬢様ではないのだ。グレンを支える良き妻、グレン亡き後の強き母も見事に演じている。名演なり。
 そしてジェームズ・スチュアート!私は彼の大ファンなのだ(笑)。あのとぼけた表情、もごもごとした声と喋り方、彼を観ているだけでニヤニヤしてしまう。いい役者は観ているだけで楽しいのだ。でもつい先日、亡くなってしまったんだよなぁ...。

 しかし、強引な結婚といい、軍の式典で演奏するブルースといい、その破天荒さはまるでパンクの様に見える。実際にグレンはかなりブッ飛んだ人間だったのかもしれない。そしてそんなところも...大好きである(笑)。でもそんなデタラメさ(観ればわかるが、呆れるくらいデタラメな奴だぞ)こそがジャズの本質なのかもしれない。

 ともかく音楽ヨシ、演出ヨシ、演技ヨシ、ジャズ伝記映画の最高傑作である。何をおいてもまずはこの1本を。ご近所のレンタルビデオ屋にもきっとあります。


■ ジャズ・ファンの目

 『裏窓』の、『翼よあれが巴里の灯だ』の、『スミス都へ行く』のジェームズ・スチュアートである。何回も、何回も、スクーリンで観て来た有名俳優なのに、ここではグレンにそっくりだ。ラスト近く、ヘレンの机の上に飾ってあるグレンの写真に至っては、スチュアートなのか、グレン本人なのか、区別がつかないほどだ(笑・良く観るとスチュアートだった)。
 スライドさばきもなかなかのもの、演奏シーンにもほとんど違和感はない。ヴェテラン・ジャズ・ファンの中にも、グレン・ミラーと聞いて、この映画の中のジェームズ・スチュアートの姿を思い浮かべる方は少なくないであろう。まさにグレンを「演じきった」と言える。
 奏法指導や吹き替えについては諸説あるのだが、指導はジョー・ユークル、吹き替えはマレイ・マカカーンらしい。ちなみにユークルはミラーの後釜としてポラック楽団に入った人物である。




Glenn Miller 
1904 - 1944 



James Stewart 
in ' The Gleen Miller Story ' 


 食えないころ、グレンは親しいジャズ・メンから「アレンジに取り憑かれてしまたんだなぁ」と言われる。この映画の音楽的な主題はアレンジの重要さである。前述した「茶色の小瓶」の他、お蔵入りしていた自作曲「ムーンライト・セレナーデ」をアレンジによって蘇らせる場面も登場する。このくだりが実によく出来ている。楽器を演奏する人にはちょっとした参考になるだろう。

 ゲスト出演はルイ・アームストロング(as)、シーン・クルーパ(ds)、モダネイヤーズ(vo)、フランセス・ラングフォード(vo)など。中でもラングフォードが巨大な格納庫の中で無数の兵士達を前に歌う「チャタヌガ・チュー・チュー」が絶品である。マーティー・ナポレオン(p)やベイブ・ラッシン(ts)といった通好みのゲストも観られる。
 なお、音楽監督はジョセフ・ガージェンソンだが、アレンジャーとしてヘンリー・マンシーニの名前もクレジットされている。

 スウィング・バンド数々あれど、グレンのサウンドは「なんか、グっと来るんだよなぁ」と思っていたら、なるほど、「セントルイス・ブルース・マーチ」といい、「チャタヌガ・チュー・チュー」といい、どこかにアメリカ人の郷愁をかき立てるような力があるのだな。この映画を観るとそれがよーく判る。アーノルド将軍の言葉「君の音楽は故郷(クニ)を思い出させる」が温かく響く。ともかく必見である!


'The Unforgettable Glenn Miller'
RCA PCDI-5459
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